整調(タッチの調整)で最も大切な工程

2013.8.16

グランドピアノの整調の工程は数えると主要24工程あります。それを普段、お客様の御宅で全部は到底実施出来ませんので、技術者がその日その日、テーマを持って今日はこれを少しやってみようと、目の前のピアノで必要だと思う事を1つやる事が精一杯だと思います。そこで、ピアノの整調(タッチの調整)で最も大切な工程は何だろうと考えて、僕は鍵盤調整、(ピン磨き)が最も重要だと思います。それは、ピアノのタッチの土台となる調整だからです。ピアノの鍵盤はシーソーの動きをしていて、手前を指で弾く事により鍵盤の奥が上がり、鍵盤の奥の上にアクションが乗っかっていてハンマーが弦を叩いて音を出します。鍵盤のシーソーの支点と力点に金属のピンが立っていてそこを鍵盤が通っています。その各ピンと鍵盤とで余計な摩擦を生じたり、また反対にガタがあったりしたら指の力の感覚を弦に正確に伝える事は出来ません。経年変化により鍵盤とピンはかなりの摩擦を生じるようになります。そこでそのピンを特殊な潤滑剤を用いて磨いてやる事だけでも、その強い摩擦は嘘のようになくなります。極論をいえば、ピン磨きをするだけでタッチは良く変わります。そして、ロスのない鍵盤の動きを確保する事が、全ての土台であり、土台が出来ていない上に何を積み上げても良い効果は得られないと思います。そうして鍵盤調整が出来て今度はアクションとの接点をも磨き、アクションを載せ、アクションをピアノの棚板に落ち着かせます。そして、これはお客様でも見て分かる事ですが、白鍵の高さが目で見る限り一枚の板のように均一になっている事も、弾き易さを得る重要な調整です。そして、その後もとても重要な調整は続きます。この作業をじっくりやるとどうしても1時間~2時間かかります。そうすると普段、調律でお伺いさせていただいた際には正直、出来ない事が多いです。そこまで必要ないとお客様がおっしゃられれば仕方ないですが、グランドピアノをお持ちになる方で、今のピアノのタッチに満足しておられない方には是非実施させて頂きたいと思います。

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